1.合成ゴムの開発の歴史
(1)世界の開発の歴史
(2)日本では
合成ゴムが日本で作られたのは、第2次大戦中で、軍用の製品を作るためで、ポリクロロプレン、ブタジエンアクリロニトリルゴム、多硫化系合成ゴムなどが工業化された。しかし、戦後それらの装置は接収され、全く生産は止まってしまった。
戦後は、外国との技術提携により、
という歴史をたどっている。現在は、旭化成工業、電気化学工業、日本エラストマー、日本ブチル、日本合成ゴム、三菱化成、クラレ、三井石油化学工業、日本ゼオン、昭和電工・デュポン、住友化学工業、東ソー、宇部興産などが、各種ゴムを製造している。
2.ゴムの特性を支配する基本因子
引張り強度、伸び、硬さ、磨耗、屈曲、耐熱、耐油、導電、気体透過など、ゴムの特性は多岐に渡っており、一見複雑に見える。しかし全てのゴムは第1回、第2回で述べた分子構造に由来する、『4つの基本因子』によって支配されている。
(1)結晶性
水を冷却していくと、0℃で凍って固い氷になる。氷は温度の低下によって、水の分子の運動が困難になり、一定の形に分子が配列して出来る。液体の水と個体の氷では同じH2Oでもその性状が異なるが、その差は分子の結晶の有無によっているのであるから、分子の規則正しい配列(結晶)が、いかに物質の性質に影響するのかが分かる。 ゴムの中に結晶ができると、その部分の分子は規則正しく配列し、ゴム同士が互いに接近して強固なブロックを形成する。従って、ゴム分子が分子運動する余裕も少なくなっており、非結晶部分より密度も高く、非常に固い部分を形成している。この為、ゴム中に結晶ができると硬さが上昇し、引張り強さが大きくなり、伸びと弾性が低下する。また、耐油性は向上するが、耐寒性は低下する。 ただ留意すべき事は、結晶性のゴムといっても、ゴムは水などから見れば巨大な高分子なので、たとえ結晶温度まで冷却しても、水のようには簡単には結晶しない。ゴムが結晶するには、ゴムの分子が移動して規則正しい配列をする必要があり、ゴム分子は巨大なため移動に時間がかかり、水のように0℃ですぐ結晶する場合と大きく異なる。 また、結晶性のゴムは伸張を受けると室温でも結晶する。これは、伸張を受けると、ゴム分子同士が接近し、一定方向に配列するため瞬間的に結晶する。伸張をゆるめれば、すぐに結晶が融けて元に戻る。結晶性のある天然ゴムやクロロプレンゴムが純ゴム配合(カーボンなどの補強剤無添加)でも強度が大きいのはこの為である。
結晶性ゴムの一般的性状
(脆化温度ではないことに注意すること。)
(2)極 性
原子は、電気的に見るとプラスの電気を持っている陽子とマイナスの電気を持っている電子から成っている。このプラス、マイナスの電気量が同じであるので、電気的には中和されている。(中性、ゼロ) しかし、電気的には中性でも2つの場合が考えられる。1つは、プラスの電気の重心と、マイナスの電気の重心が完全に一致している場合、今1つは、重心位置が一致していない場合である。後者の場合電気的にはプラス・マイナス ゼロであってもプラスの電気の多いところと、マイナスの電気の多いところが分離しており、ちょうど磁石のような性質を帯びる。分子の中に陽極と陰極が出来ていることになり、このような状態を極性という。そして強制を持っている分子を極性分子、そうでない物を非極性分子という。 それではどのようなゴム分子が極性を持っているのか。一般に炭素(C)と水素(H)の原子だけから出来ているゴムの分子は極性がないか、あっても非常に小さいと考えて良い。ゴム分子の中に窒素(N)、酸素(O)、塩素(Cl)、硫黄(S)などが結合している場合は、シリコンゴムを例外として、極性を持ったゴムと考えて良い。(加硫剤としての硫黄は、極性には影響が少ない。)
極性ゴムの一般的性状
(3)安定性(耐老化性)
ゴム製品を屋外で使用すると、表面が固くなりクラックが入ることを私たちは経験的に知っている。これをオゾンクラックと言うが、ゴムと老化は断ちがたい関係にある。ではゴムの耐老化性(安定性)は何によって定まるのかというと、分子の二重結合の有無によって決まる。 二重(不飽和)結合が存在すると、反応性が大きく不安定な化合物になる。また、二重結合のところで酸素の攻撃を受けやすくなり、老化を起こすので二重結合のないゴム分子が望ましいが、二重結合がないと硫黄による加硫(橋掛け)が出来なくなる。本質的には二重結合のないブチルゴム、EPTゴムなども硫黄による加硫を行うなめ、わずかながら二重結合を分子の中に入れている。安定性(耐熱老化性、耐オゾン性、耐候性)を左右する要因は次のようになる。
一般的にゴムの安定性が向上すると
(4)柔軟性
ゴム弾性が大きかったり、小さかったり、これはゴム分子の自由運動性、屈曲性(柔軟性)による。
柔軟性を向上するには、
ゴムの柔軟性が大きくなると