1.コロンブスがゴムの第一発見者?
こうしてゴムは、この二人によって科学への道が切り開かれ、ヨーロッパの科学者は競ってゴム利用の研究を始めた。しかし、ヨーロッパへ送られて来るゴムは樹液ではなく、黒い塊だったため、研究の中心はこれを溶かす溶剤の発見であった。
ハンコックやマッキントッシュにより、ゴムは生活の中に入ってきたものの、まだまだ不完全な物だった。寒い日には硬くなってひび割れするし、暖かい日が続くと、軟らかくなりベトベトしてきて使いものにならなかった。
加硫の発明と型加硫の発明により、ゴムの利用範囲は爆発的に伸びたが、原料のゴムはアマゾン地方の野生のゴムであったため、需要に供給が追いつけなかった。ゴムの樹(ヘベア・ブラジリエンス)を英国領植民地で栽培することを説く人もで、ハンコックもその一人であった。
2.ゴムの汁(ラテックス)は夜造られる。
(1)ゴムはどうして生まれるのか。
ゴムの樹の汁からゴムはできるが、その汁、特にゴム粒子が植物体のどこから、どうして出て来るのか、そのメカニズムは今なおよくわかっていない。ゴム粒子は、でん粉や脂肪小球体やそのばかの物質とともに、コロイド状の液(水に溶けない脂肪が水に溶けている、牛乳のようなもの)に浮遊している。ゴムは非結晶性(結晶性という言葉については後の回で述べる。)の炭化水素で、炭水化物の代謝物として特殊な細胞のなかで造られるといわれている。 ゴムの汁(ラテックス)の存在理由説には次のような説がある。
その存在理由はゴムのみぞ汁(知る)だが、人類にとって、何よりも私たちゴム産業従事者にとって、よくぞ存在してくれた、と感謝したい。
(2)ゴムの採れる樹
天然ゴム分(化学的にはポリイソプレン)を多少なりとも含む植物は、地球上に2000種類存在し、実際にその存在が確認されたのは、500種類(発明王エジソンが確認したと云われている)である。天然ゴムとは、植物学的には特別珍奇なものではなく、その辺に自生するタンポポやイチジクも茎に傷つければ白い液が出るが、この中にも天然ゴム分がわずかながら合まれている。
トウダイグサ科
パラゴムノキ(ヘベア・ブラジリエンシス)
アマゾンが原産.パラ港から輸出されたのでパラゴムの名が付いた。天然ゴムと云えば、パラゴムをさすほどで、生産量の90%以上を占める。
マニホットゴムノキ
ブラジル原産。
クワ科
パナゴムノキ
中央アメリカ原産。
インドゴムノキ(フィカス・エラスチカ)
マレイシア、インドネシア原産。喫茶店などにある観葉植物。
キョウチクトウ科
ザンジバルツルゴム(アフリカ原産)
フンツミアエラスチカ(西アフリカ原産)
キク科
グアユールゴムノキ(北メキシコ原産)
ロシアタンポポ(旧ソ中国境原産)
旧ソ連で栽培されたことがある。
アカテツ科
ガタパーチャノキ(マレーシア原産)・・・・・・ガタパーチャ。
空気中では酸化しやすい(老化しやすい)が、水中では、無限の寿命を持っているため、海底電線用に使われた(現在は合成樹脂が使われている)。ゴルフボールの外皮が主な用途。
バラタ(南アメリカ原産)
耐水性のためゴルフボールの外皮に使用。
サポジラ(中央アメリカ原産)
チューインガム原料(現在は塩化ビニール)
マメ科
アラビアゴムノキ(アカシア・セネガル)(アフリカ西海岸原産)
水溶性なので薬の丸薬や錠剤を固めたり、切手の糊、各種インキに利用。
(3)ゴムの汁は夜造られ、処女の樹皮は汁の出が少ない。
昼間ゴムの薬の部分で造られたゴム分子が、日が暮れると樹皮に近い層へ送られ、そこで高分子になる(名物ゴム技術者故金子秀男氏の考え)。汁(ラテックス)の採取は、早朝の5時二ろから8時ころまでにタッピング(樹に傷をつけること)し、午前中で集め終わる。 切り目は毎日新しく付けられるが、樹皮はやがて再生し、6~7年で再び切りつけができる。そして、最初の処女樹皮よりも乳管が完全なものになるので、汁(ラテックス)の出がよい。樹齢が5~7年で切りつけができ、約14年ぐらいで収量は最高に達し、その後は減少する.ゴム樹の生産寿命は約20年ほどである。
3.ラテックスの成分、ゴムの製造、種類
(1)ラテックスの成分
※( )内は乾燥ゴムに対する% (2)天然ゴムの製造(80%をしめるスモークドシート)
ラテックス採取→濃縮→凝固(ギ酸、酢酸を使用)→滑付きローラーによるシート出し→乾燥(くん蒸など)。
(3)種類
天然ゴムはその製造材料、製造方法によってスモークドシート、ホワイトクレーブ、ぺ一ルクレープ、ブラウンクレープ、SPラバ一、TCラハー、エアードライドシートなどがあり、気泡、かび、色の不均一、斑点などによって等級が決められている。
4.天然ゴムの分子構造
ゴムの単位となる分子は、イソプレンであるが、分子はすべて平面的ではなく、立体的に結合しており、その種類により、シス型、トランス型がある。
付加重合 ↓
このように生ゴム分子の中には、1便のイソプレン構造の中に1個の二重結合を持っているので、他の原子と結合しやすい。特に、空気中の酸素がこの二重結合の炭素と結合すると、ゴム特有の弾性が失われ、ゴムは老化する。
など、天然ゴムは、ゴム弾性のための必要条件 をすべて持っている、すばらしい物質である. 天然ゴムは、科学的に、物理的に優秀な性質を持っているものの、耐油性、耐抗性、耐熱性などに難点を持っているため、合成ゴム開発は、①、④を満足させながら前記性質を有する物質さがしであった。